広告費はいくらまで?ARPUとLTVの関係性

KPI

運営プランナーにとって、避けては通れないけど今一理解が難しい広告費についてを今回話していきたいと思います。
一般的に広告は広告宣伝部とかマーケティング部といった専用の部署が担当している場合が多いですが、広告を行うかどうかの判断などは実際の運営を担当するチームなどに任される事も珍しくないかと思います。
そんな時、送られてくる報告書や効果測定の結果には様々な略称(CPAとかCVRとか)が使われていて、それぞれの意味はなんとなく分かってもそれをどう役立てるか、このまま広告をやり続けていいのかというのは分かりにくいですよね。

今回はそんな分かりにくい広告の話を出来るだけ分かりやすくしていきたいと思います。

とても大事な1ユーザーの価値

1ユーザーの価値を気にした事はありますか?
広告費用を決める上でこの価値というのは非常に重要な意味を持ちます。
当たり前の事ではありますが、広告にかけられる費用は最低でもその広告で流入したユーザーの価値よりも低くないと、せっかくお金をかけて人を集めたのに費用を回収できなかったという事になってしまいます。

つまり、広告をかけられる費用というのは1ユーザーの価値がいくらであるかによってしまうという事になります。
このため、1ユーザー当たりの価値を把握しておく事は非常に重要というわけです。

価値を計る方法

1ユーザー当たりの価値を計る方法としてもっとも簡単なものはARPUを用いるやり方です。
ARPUというのは「売上を全ユーザーで割った平均課金額」でしたよね。
つまりは「1ユーザー当たりの売上=価値」を見ることが出来るというわけです。

じゃあ、さっそく・・・と思ったら使えないのがARPUです。
ARPUの計算式は「Sales/AU(DAUやMAU) 」ですが、そもそもAUというのは色々な要素をもったユーザーがごちゃ混ぜになっている数字です。

つまり、今日初めてプレイしたユーザーと何ヶ月もプレイしてきたユーザーが同じ「1」としてカウントされてしまいます。
一般的に登録直後がもっとも離脱率が高いため、もし広告などでたまたま人が沢山いた場合、ARPUも必然的に下がってしまうため、これで1ユーザー当たりの価値を計っても今一信用がおけないかと思います。

ではどうするか。

答えは簡単で登録日ごとに集計します。
例えば特定の日付(1/1とか)に登録をしたユーザーの累計売上と登録人数を使ってARPUを出します。
こうすることで、登録からXX日後のユーザーは概ねXX円お金を使用する(価値がある)と出せるわけです。
イメージとしては下記のような表になります。

こんな感じですね。
実はこの数字を元に「LTV」と呼ばれるものを割り出します
そしてこのLTVを使う事で、広告費用はいくらが適切なのかを割り出す事が出来るのです。

LTVとは

LTVとは、Life Time Value(顧客生涯価値)の略で、ユーザーが生涯にどれくらい利益に貢献してくれるのかを表す指標です。
そしてこれを使えば、1ユーザー当たりの価値が算出できます。

例えば、1か月に1,000円ずつ商品を買うユーザーが、12か月買い続けて離脱した場合、12,000円(1,000円×12ヶ月)が売上になりますよね。
これに売上を上げるのにかかった費用を引いた金額がLTVとなります。
ただ、ゲームの場合は1ユーザー単位で費用を計算するのはかなり難しいかと思いますので、この際いったん除外しましょう。
その代わりにかならず発生してしまう費用「決済手数料」が存在するため、これは引いておきます。

例えば、先ほどのお客様の決済手数料が売上の30%だった場合は、「1,000×(1-0.3)×12か月」で計算します。
この場合、LTVは8,400円となります。

つまりこのユーザーの価値は8,400円となるわけです。
しかし、基本プレイ無料の場合は課金するユーザーと課金しないユーザーが混在するため、0円のユーザーもいれば、1,000円のユーザーもいる状態です。
そのため、先ほどのARPUで使った考え方、登録日毎に集計をする方法を使います。

こうする事で1ユーザーの概ねの価値が分かりました。
それでは次に広告の効果を測る方法を見てみましょう。

広告の効果を見る

広告で使用する略称はたくさんあって、効果測定の資料を見てもとても分かりにくいですよね?
ですが、ゲーム運営側から見るべき数字というのは実はそこまで多くありません。
本当に最低限必要な単語というのは下記の4つです。

◆Imp・・・広告が表示された回数
◆CTR・・・広告が表示された回数に対して、クリックされた割合
◆CPA・・・顧客一人を獲得するのにかかった費用で、獲得単価とも言います
◆CVR・・・広告をみてサイトを訪れたユーザーのうち、実際に獲得できるユーザーの割合

この4つの意味と使い方さえ覚えてしてしまえば、広告の効果というのはほとんど分かってしまいます。
実際には他にも色々とありはするのですが、運営に必要な要点は支払った広告代をペイできる効果があったかなので、それ以外の効果については広告宣伝部なりに任せてしまいましょう。
それでは各単語の意味を詳しく紹介していきます。

Imp

「Impression」の略称であり、広告が実際に表示された回数を指します。
場合によっては「Imps」などと省略されている場合もありますが、単数形か複数形かというだけですので、特に違いはありません。

これを見る意味は、広告自体がそもそも多くのユーザーに見られているのかを知るためです。
この値自体は多い少ないというのをそのまま語る事に意味はありませんが、他の値などと照らし合わせた結果、意図的に増やしたり減らしたりをする等の調整が必要になる場合があります。
また、極端に少ない場合は割合で出される値の信憑性が低くなる事を頭の片隅には入れるようにしておきましょう。

CTR

「Click Through Rate」の頭文字を取ったもので、広告のクリック率を指します。
この値は「広告クリック数/Imp」で算出する事ができ、主に広告の画像なり動画なりが魅力的だったかや、広告の掲載場所にあった内容を訴求できていたかというのを測るのに使用します。

例えば、自分がラーメン屋をやっていたとして、広告を置くとしたら「ダイエットの方法のサイト」か「グルメ紹介サイト」どちらがいいでしょうか?
一般的なラーメン屋であれば、間違いなく後者だと思います。
しかし、「低カロリー」が売りのラーメンだったらどうでしょうか?
もしかすると、ダイエットでラーメンが食べたくても食べれないと思っているお客様が興味を示すかもしれません。

こんな時に両方のサイトに広告を置いてCTRを見比べてみれば、ニーズがあるのかなどを見る事が出来ます。

他にも、画像Aと画像Bどっちの方が人気があるのかを見る場合などにもそれぞれの画像のCTRを比べてみることで、より人気のある画像はどちらかなどを見る事ができます。

CPA

「Cost Per Action」の頭文字を取ったもので、1ユーザー当たりの獲得に掛かった単価を見る事ができます。
非常に雑な言い方をすると、この値が安い方がより効果的な広告であるといえます。
この値は「広告費/獲得数」で算出できます。

この値を見る際の非常に大事な注意点として、低ければ低いほど効果的な広告ではありますが、売上に対しての成果は関係ないという点です。
例えばこの値を最大化するのに手っ取り早い方法として、「登録したらもれなくXXX円分の金券をプレゼント」とする方法です。
この方法で集めたユーザーが果たして継続してくれるのか、このゲームに課金をしてくれるのかすごく疑問がありますよね。

しかしながら、広告を行う部署と運営を行う部署がわかれている場合、往々にして「低予算で人を集めた。離脱するのはゲーム側の問題だ」という言葉が出てきます。
先ほどの方法は極論ではありますが、一見してそれと分からない広告で同じような自体が発生することは多々あるため、CPAが低い事が必ずしも良いという事にはならないと覚えておきましょう。

CVR

「Conversion Rate」の略称です。CRでは?と突っ込みたいところですが、3文字で統一する方が見栄えがいいためだと思われます。
これは、実際に広告を見てサイトを訪れたユーザーのうち、実際に獲得ができた割合を示しています。
計算式は「獲得数/(広告からの)流入数」となります。

この値の重要なポイントは広告で見せている内容と実際のページで内容に齟齬がなかったかという点になります。
一般のwebサイトであれば、サイト内での案内が不十分で登録できなかった可能性もありますが、昨今のスマホゲームはiTuneストアやGooglePlayなどを使用するため、サイト内の案内で不十分で登録できなかったという可能性はほとんどありません。

このため、この値が低い理由として考えられるのは広告で見せられた訴求ポイントとストア内の内容に齟齬があった場合か、極端にレビューや評価が低いという場合となりますが、後者のレートや評価は誰でも良し悪しが判断できるので、基本的に気にするべきは前者となります。

以上の4つが広告の効果を見る際に使える値となります。
次はこれらの値を使って実際に数字を見ていきましょう。

広告費はいくらまで?

さて、最後にこれらの値を使って実際の広告費がいくらぐらいまでかけられるのかというのを吟味していきましょう。
広告にかけられる費用は当然のことながら、「獲得に掛かった費用<獲得で手に入る利益」という形にならないといけませんよね。

それではまず、「獲得で手に入る利益」から求めていきましょう。
これはここまで読んでいただいた方々であればすでに大よそ予想が付いてしまっているかもしれませんが、獲得で手に入る利益はLTVを求めれば分かります。

しかし、LTVは生涯価値のため、求めるためにはユーザーが離脱しなければなりません。
実際のビジネスの現場で全ユーザーが離脱するまで待つことは不可能でしょう。

そこでLTVを一定期間までで区切るという方法を使用します。
もはや生涯価値ではないではないかというツッコミもありますが、目的は広告費の額を決めることなので気にしません。
例えばLTVの集計期間を3か月とした場合、登録日から90日後時点でのLTVを使用するという具合です。

さて、これで1ユーザー当たりを獲得した際に得られる利益は分かりました。

次は「獲得に掛かった費用」ですが、これは非常に簡単で、CPAを見ればよいのです。

つまり、広告費として掛けられる費用は「CPA<LTV」が成立する金額までとなります。
この式と各数字さえ覚えておけば、広告を行った結果、将来的に回収できるのかどうかが一発で分かるというわけです。

まとめ

概ね広告にまつわる数字はこれで全部となります。
しかし、1点だけ注意してください。
先ほども書きましたが、CPA自体は売上に対して因果関係が無いという点です。
DAUの場合と同じように、獲得したユーザーの属性は問われていません。

そのため、より厳密な効果想定を行うために、入った広告のルートによってLTVの集計を分ける必要があるのです。
そうしないと自分の成果を出したい広告の担当者は大量に集められる広告ばかりに目が行ってしまいます。

そして、そのツケは運営を担当しているプランナーの元へと来てしまいます。
そしてそれを守れるのは広告の効果測定に使用される数字の意味、広告の内容を理解することです。

広告は一見すると非常に難しいように見えますが、ゲームの施策や命運を左右する重要な内容ですので、是非覚えておきましょう。

次回の内容はまだ未定ですが、今度はKPI以外のものもやってみたいと考えております。
ゆっくりとした更新ではありますが、今しばらくおまちくださいませ。

コメント