KPIの因果関係と勘違い

KPI

今回はKPIの因果関係のお話。
KPIの話以外もしようといいつつKPIの話になったのはご愛嬌。

唐突ですが皆さんは「年収が高いほど、カロリー摂取量が少ない傾向にある」データを見せられた時に、「よし。年収を上げるためにカロリー摂取量を減らそう」と思うでしょうか?

普通は思いませんよね?

このデータを見て考えられる事は
・高所得なほど健康的な生活を意識する?
・カロリーが多い食材(炭水化物など)は安い傾向にある?
とかではないでしょうか。

しかし、答えは「年齢が高いほど年収が高く、食べる量が少ない」という話だったりします。
これはあえてミスリードを狙った内容ですが、もし調査した際に「年齢」という情報が欠如していたら、データの取り方次第では先ほどのような、違った因果を導き出す可能性が発生してしまいます。

今回は因果関係の勘違いについて、ソシャゲのKPI分析でありがちなお話していきたいと思います。

課金ユーザと継続率

ソシャゲ界隈の話で「お金を払った(課金)ユーザーは離脱しにくい」というのを耳にしたことはあるでしょうか。
これは1度でもお金を払うと、勿体なくなって辞めにくくなるという話で、実際に課金をしているユーザーの方が継続率が高い傾向にあると出ています。

しかし、この分析は先ほどのような勘違いが起っているポイントともいえます。
この問題は、課金ユーザー無課金ユーザーの継続率を比較して課金ユーザーの方が継続率が高という話ですが、これだけでは「お金を払ったから続ける事にしたのか、元々続けるつもりだった」のかが分からないというのがポイントです。

どういうことなのか実際に見ていきます。

課金と継続の関係性

まず、今回は「お金を払った(課金)ユーザーは離脱しにくい」という内容ですので、ユーザーを課金の有無と継続意思の有無で比べる必要がありますよね。
具体的には、ユーザーの属性を下記のように分解する形になるかと思います。

  • 状態A:継続する意思があり、課金をしたユーザー(課金者)
  • 状態B:継続する意思があり、課金をしていないユーザー(無課金)
  • 状態C:継続する意思がなく、課金をしたユーザー(募金)
  • 状態D:継続する意思がなく、課金をしていないユーザー(離脱)

そしてこれの「”AC”における”C”」「”BD”における”D”」比率を比べれば、課金経験の有無で継続率が変わるのかが分かりますよね。

ちなみにここでは「継続する意思」としていますが、これはいわゆる継続率として計測できるのは実際にログインした人だけで、たまたま忙しくては入れなかったユーザーなどが計測から漏れてしまうので、あえてこう書いています。
概ね継続率と同じなため、継続率だと思ってもらっても問題ありません。

さて、これについては実データをお見せできないのですが、「”A+C”における”C”」よりも「”B+D”における”D”」の方が割合が多いというのは確かでした。
というとこは、「お金を払った(課金)ユーザーは離脱しにくい」という話は事実のようです。

しかし、ここで証明終了ではありません。ここからが今回の本題です。

さて、お気づきの方もいるかもしれませんが、Cのユーザーのように遊ぶ気が無いのにお金を払うというのは極めて少数派ではないでしょうか?
このデータを集計するのは非常に困難なため、確たる証拠はありませんが、使わないと分かっているものにお金を払う人というのは殆どいないように思います。

そうするとこの比較は、初めから継続する意思のあるユーザーが多い集団ごちゃまぜな集団とを比較して、前者の方が継続する人の割合が多いということを証明した事になります。
つまりこの例の場合、「課金と無課金」という括りで比較するといかにも妥当な比較対象に見えますが、含まれる属性を考慮するとあまり妥当ではない比較になるという事です。

今回の例は非常に分かりやすいものにしておりましたが、中にはすぐに分からないようなものがあるかもしれません。

そういった事例は次のポイントを注意することである程度見分ける事が出来ます。

相関関係と因果関係を見極める

相関関係と言うのは、片方の変数に応じて、もう片方の変数も同じ変化をする関係です。
例えば、年齢と年収は一般的には年齢が上がれば年収も上がるため正の相関関係があり、年齢とカロリー摂取量は逆に年齢が上がれば少なくなるため、負の相関関係があります。

因果関係と言うのは、そのままの意味ですが、お互いに作用する関係性にあるかどうかです。
上の例で言うと、「年齢上がると、年収が上がる」「年齢が上がると、カロリー摂取量が下がる」ということから、年収とカロリー摂取量は同じ年齢を基準に作用しているため、見かけ上は年収とカロリー摂取量にも相関関係がある可能性が高いと言えますが、カロリー摂取量が年収を決めるわけでも、年収がカロリー摂取量を決めるわけでもないため、因果関係にはないといえます。

この2つを明確に分けて理解する事で、見かけ上の相関関係か本当に相関関係にあるのかを見分ける事ができます。
「お金を払った(課金)ユーザーは離脱しにくい」の例で言うと、「ゲーム(ガチャやスタミナ回復)にお金を払うのはどんな時か」を考えてみると良いかと思います。

ゲームを続けたいから払うのであって、払ったらゲームを続けたくなるわけではないですよね?

つまり、相関関係にはあってもお互いに作用する関係ではないので、因果関係にはないといえます。

このようにお互いの数字を一歩踏み込んで「何故作用するのか」の因果を考える事で初めて相関関係を生かせるようになります。
なので、お互いの関係を見る際はまず、その数字はどういう意味を持っているのかをしっかりと意識するようにしましょう。

まとめ

さて今回は相関関係と因果関係ですが、いかがでしたでしょうか。

まとめと言うことで簡潔にまとめると、「相関関係にあるからと言ってお互いがお互いに作用するわけではない」「因果関係を明確にしておく事で初めて相関関係に意味が生まれる」2点を意識してKPIを見ましょうと言うお話でした。

また、今回の内容では端折ってしまいましたが「払ったらゲームを続けたくなる」という効果も実はあったりします。
これはコンコルド効果と呼ばれるものですが、今回の内容からはやや脱線する話になってしまうため、今回はあえて触れないようにしましたのでまたいつかタイミングを見て触れたいと思います。

今回は少し軽い内容にしてみようと思いましたが、思ったよりも重くなってしまいました。
そして次回こそはKPI以外の内容を話して行きたいと思います。

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